外国人労働者を採用する場合は慎重に
新しく外国人雇用制度が作られ、外国人介護労働者を海外から招き入れることをお考えの介護事業者も多いと思います。
外国人労働者を雇用するにあたっては様々なパターンがありますが、最も容易なのが特定技能という在留資格を利用した雇用です。
しかし、特定技能を含め、どの制度を利用しても費用はかかります。費用をかけたのに失敗に終わってしまっては介護施設の運営にも響いてしまうでしょう。
今回は、外国人介護労働者を採用するにあたっての細かいポイントを検討していきます。
国民性を考える
現在から将来の日本の展望としては、アジアの多くの国々の労働者が日本で働くことになっています。
しかし、アジアの国々といっても全て同じというわけではありません。
例えば隣国の中国と韓国であっても国民性は大きく違うことがわかるでしょう。同じアジアだから、隣国だからといってもその国の歴史はそれぞれですし、それらを要因として形成されてきた国民性だって違います。
介護を行うということは、人に対して直接的なサービスを提供することです。身体介護はもちろんのこと、精神的なケアが必要な要介護者もいます。
介護には「ホスピタリティ」が重要だと言われていますが、外国人介護労働者にもその点を重視する必要があります。
例えば、介護の特定技能試験が頻繁に行われているフィリピンでは、ホスピタリティに長けた国民性があると言われています。
その他、東南アジアにもホスピタリティに長けた人材が多いという話がよく聞かれています。
まずは、その国の国民性にスポットを当ててみるのも良いかもしれません。
最も重要なのは「個人」
国民性にスポットを当てておおよそのイメージすることはとても重要だと思いますが、最も重要なのはやはり個人です。
例えば、同じ日本人を介護職員として採用したとしてもその個性やレベルは人それぞれです。採用の失敗を経験した事業者の方も多いと思います。
同じ日本の国民性はあっても介護に向いている人材と向いていない人材はもちろんいます。そのほかにも勤勉さや性格、倫理観なども人によって大きく差がありますね。
当然外国人材にもそれは当てはまります。フィリピン人だから誰でも良いなどという考えでいると採用に失敗してしまうでしょう。
外国人採用にあたっては、「面接」が最重要視されます。日本人を雇う時よりも入念に検討したほうが良いと思います。
現在は、介護事業者が直接的な面接を行うことが一般的ですが、利便性を追求してネットによるテレビ電話方式での面接も行えるところがあります。
しかし、可能な限り直接的な面接をしたいところです。
本人をしっかりと見定めるといった点が一番の理由ですが、事業者側がその人材の故郷に行くことでその国についての理解を深めることができます。
また、その人材がどんなところでどのような職業訓練を受けてきたかも知ることができれば大きな判断材料の一つとなるでしょう。
直接面接を第一に考え、補充的にテレビ電話等のネット面接を活用するのが良いと思います。
介護の能力や日本語の能力はどうやって判断する?
外国人材の介護についての知識や技能、日本語能力も人それぞれですが、在留資格によるおおまかな判断材料としては以下のとおりです。
【介護能力・介護日本語能力が高い】
介護
↓
EPA
技能実習生
特定技能
↓
留学生
【介護能力・介護日本語能力が低い】
在留資格「介護」は介護福祉士取得を前提とした資格であり、介護福祉士養成校で学んだ人材でもあるため、当然レベルは高いです。また、国どうしで結ばれた経済連携協定による「EPA」制度での外国人も介護福祉士になることを目標としている者が多いため意識は高いと思われますが、日本語能力の条件しかないため介護の現場経験があるとは言えません。
技能実習生と特定技能については似ている部分があるのですが、特定技能については特定技能試験にさえ合格してしまえば良いことと、日本語能力の条件が「N4(下から二番目)以上」であることから、個人の能力差が激しいと考えられます。その反面、技能実習と比べて採用者の義務や負担が少なく最も雇用しやすい種類の制度でもあります。
留学生については、そもそも介護についての知識は必須ではないため介護能力については期待しないほうが良いでしょう。単純な日本語能力に関しては比較的高い方が多いと思います。
一番日本語能力も介護能力もまたその経験も豊富なのが「元EPA」です。元EPAはEPA制度を利用して日本の介護の現場で数年働いた後、介護福祉士の国家試験に不合格のため帰国した者達です。このような人材を特定技能や技能実習生として探し出すことができれば理想的なのですが、もちろんこのような経歴の人材は引く手あまたでなかなか確保することはできません。
どのような点を重視すれば良い?
実際に外国人の介護労働者を採用しようとした場合、どのような点を重視すると良いでしょう。
一般的に介護能力が挙げられると思いますが、私はそうは思いません。
例えば、日本人の介護未経験職員を採用した場合を考えて見ましょう。
介護福祉士の養成校等を卒業した職員だったとしても、現場での経験が無い場合が多いでしょう。
全く介護の知識が無い職員にゼロから介護の仕事を教える場合でも、知識だけはある職員に介護の仕事を教える場合でも、仕事を覚えるにはそれほど大差はないと思います。
一ヶ月二ヶ月の違いはあっても、長い目で見るとそれくらいの期間はさほど重要とは思えません。
むしろ、一ヶ月二ヶ月の違いよりも重要なのは、「ずっとこの職場で働くことができるか」でしょう。介護事業者にとっての一番の関心ごととなりますね。
その人個人の持つホスピタリティや勤勉さは、介護の仕事を長く続けるには非常に重要です。介護の仕事の適正を検討材料に入れることは雇用コストを下げる意味でも重要な事項となります。
はじめにいくら介護の知識がある人材を採用しても、継続的に仕事ができなければ全くの無駄になってしまいます。継続的に仕事をしていける適性と意志があれば、その職員に仕事を教える期間が多少長くなってもデメリットとは言えないでしょう。
介護の仕事は机上の論理ではなく、現場での実践がほとんどと言えます。いくら本を読んで脱健着患を覚えても、実際に試してみなくては身につきません。現場で覚えた知識のほうが早く深く記憶に刻まれます。
介護の知識よりも知っておいて欲しいことは
介護の仕事について覚えさせることはその人材に適正があれば特に問題にはならないと思いますが、事前にしっかりと学んでおいて欲しいと考えるものもあります。
それは「日本企業の特殊性」です。
日本が世界的に特殊だと言うことではありません。しかし、日本社会で重視されていることや守らなければならないことは東南アジアから見れば特殊に思えることかもしれません。
標準的な日本企業のコンプライアンスは大企業だけでなく、中小企業や福祉事業者にも求められてきています。日本ではコンプライアンスのレベルの底上げが行われていると言って良いでしょう。
また、危機管理。リスクマネジメントという名の研修を受けている施設も多いと思います。
福祉施設の危機管理は一般企業のそれとは少々違います。例えば、避難訓練は一般企業のものとは真剣さが違いますね。
何より重要なのが利用者の命。自分だけの命を守るための一般企業の避難訓練とはわけが違います。
また、感染症対策や虐待防止対策は大きなリスクマネジメントとなります。これも一般企業とは大きく異なりますね。
さらに介護技能実習生については、災害時に災害弱者となる得ることや知識を身に付けないうちに感染症を拡大させてしまうことが懸念されています。
これらの知識を植え付けるのには苦労すると思います。日本という国の特殊性が絡んでくる問題だからです。
この点で容易に理解をしてくれる外国人は多くはないと思います。私としては、介護を学ぶよりもこの点についてあらかじめ祖国で学習してくることが日本の介護事業者の利益となると考えています。
なぜなら、これらの知識を日本において学ばせるには大変な労力がかかるからです。
例えば、介護の知識は毎日の実践で勝手に身についていきます。しかし、避難訓練や感染症対策研修、虐待防止研修などを毎月行うようなところは皆無です。良くても一年に一回、悪ければ数年に一回しか行っていない施設もあるでしょう。
そのようなところでそれらの知識がない外国人労働者が働く場合、長い間それらの知識が無いまま働くこととなります。それは介護事業者の大きなリスクとなるでしょう。
また、日本語能力については、会話ができても漢字は読めないと思っておいたほうが良いでしょう。また介護から少し離れた専門用語も理解が困難です。
そんな中で研修を行っても、半分も理解できないと思います。個別に研修を行えばまだ良いのですが、集団で行う研修で外国人のペースに合わせるわけにもいきません。
私は外国人介護労働者を採用する日本の介護事業者の負担はこういった点でも現れてくるのだと思っています。
以上、外国人介護労働者を採用するにあたっての細かい検討事項を挙げましたが、今後外国人介護労働者はどの介護施設でも採用せざるを得ない状況になってくると思います。早めに検討を進めておくことが慌てずに良い人材を確保することにつながることと考えています。
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