介護事業者必見!技能実習と特定技能の違いは?【施設側の負担の比較】

外国人材

誰も教えてくれない技能実習と特定技能の本当の違い

介護職種の外国人採用にはいくつかの種類があります。

主には「EPA(経済連携協定)」による採用、在留資格「介護」による採用、技能実習制度による採用、特定技能による採用です。

その中で、皆さんが一番悩むのが、

「技能実習制度」による実習生の採用

「特定技能」による採用

だと思います。

なぜなら、この2つの制度は一見すると同じような制度に見えてしまうからです。

今回はこの2つの制度の何が違うのか、どんな点を考慮して選択すれば良いのか等をお伝えしていきたいと思います。

制度の目的

ここは有名なポイントなので皆さんはすでにご存じかもしれません。

特定技能

人材不足対応のための一定の専門性・技能を有する外国人の受け入れ

特定技能では、目的自体が人材不足解消なので、ただ単に労働者供給することと同様に考えて採用することが可能です。

しかし、外国人という特殊性に鑑み、色々なケアやフォローが必要であることが条件となっています。

技能実習生

日本から相手国への技能移転(国際貢献)

一方、技能実習生は元々の目的が特定技能とは大きく違います。

日本の技術を海外に供給するという国際貢献的目的がそもそもの制度発足の理由なのです。そのため、単なる労働力の供給と考えてはいけないこととなっています。

しかし、「技能実習生の制度を利用して人材不足を補いたい」とお考えの事業者も多くいると思います。それは否定できません。

介護業界では慢性的な人材不足であるため、外国への介護技術の技能移転などという大義名分だけで全面協力したいと思う介護事業者はなかなかいないでしょう。

もちろん制度を利用して人材不足を補うことを考えることは悪いことではありません。しかし、この制度の目的を達するために技能実習制度を利用する介護事業者には様々な義務や負担が負わされる仕組みとなっていますので、後述します。

外国人労働者の能力

まずは、外国人労働者の能力の比較ですが、外国人労働者(技能実習生は「実習生」)の能力は個人個人で全く違います。

しかし、一定の条件があるため、最低限の能力の指標を比較することができます。

特定技能

入国前の試験等で日本語能力及び介護技能の水準を確認

具体的には特定技能試験に合格すること等によって一定の水準を認められるというものです。

元EPAや技能実習3年を修了したものが、無試験で特定技能へ移行できることもポイントとなります。

介護の特定技能試験は、制度スタートからはフィリピンで多く行われており、合格率はバラつきが多く見られます。30%代~80%代となっており、今後は他の国でも実施されていくこととなりますが、その国によってもバラつきが見られてくると思います。

技能実習生

技能実習生の能力については、日本語能力のみが指標となります。

というのは、介護技能実習生は介護技能を得るために日本に来るわけですから、祖国で介護等の仕事についていたことが条件となっています。

そのため、能力として問われるのは日本語についてのみです。(その他、年齢要件等、技能実習生になれることについての条件は多くあります。)

日本の介護事業者の受入れの条件

日本の介護事業者の受け入れの条件については特定技能と技能実習生で大きく違います。これは、制度の目的が影響しているからであると思われます。

多くの条件があるため、主なものを列挙していきます。

特定技能

特定技能については元々が労働力の確保が目的であるため、厳しい条件などは特にありません。

在宅系介護事業者は受け入れ自体をすることができませんが、これは技能実習生も同様です。

技能実習

・特定の講習を修了した「技能実習責任者」を選任していること。

・介護技能の実習を担当する者として、介護経験が5年以上ある常勤の職員等の中から「技能実習指導員」を1名以上選任していること。

・技能実習生の生活の指導を担当する者として、常勤の職員等の中から「生活指導員」を1名以上選任していること。

・技能実習指導員のうち1名以上は、介護福祉士または看護師の資格を有している者であること。

・技能実習を行う介護事業所が開設後3年以上経過していること。

・技能実習生に夜勤を行わせるためには、利用者の安全の確保等のために必要な措置を講じていること。(ガイドラインでは夜勤を行わせるには2年目以降とするよう努力することが定められている)

・実習生に入国後講習(日本語学習最大240時間・介護導入講習42時間)を受けさせること。

介護技能実習生については、受け入れる施設の職員が上記の体制を整える義務があります。受け入れを考えている場合は事前に職員等が研修を受けておくことが必要となります。

介護事業者の義務と負担

外国人労働者への待遇についての基本的な義務や、採用のための費用等については、両制度ともそれなりの費用はかかります。しかし両制度での決定的な違いは無いため、ここでは介護事業者及び外国人労働者の担当者に課せられる義務や負担について触れていきます。

特定技能

義務的支援の事前ガイダンス

・業務の内容や報酬、労働条件、日本においてできる活動内容、入国手続き、不当な契約がされていないこと、空港等への出迎え、住居の確保に必要な支援、相談や苦情に関する体制等

任意的支援の事前ガイダンス

・入国時の気候、服装、生活するうえで必要となる物品や金額当

・介護事業者から提供されるユニフォーム等

これらの義務は受け入れる介護事業者側に課せられるとされていますが、これらの業務を一括して「登録支援機関」に任せることができます。一般的には介護の特定技能については海外の送り出し機関及び登録支援機関を通して採用を行うことが多いと考えて良いでしょう。

技能実習生

技能実習生も特定技能と同様、住居や生活の支援、相談窓口の提供などの義務が課せられますが、「監理団体」を通しての採用となるため、これらの支援は基本的には監理団体が行ってくれます。

両者が対照的なのは、介護業務を行っていく際の介護事業者の義務や負担です。大きな義務としては技能実習生を事業者の自由に働かせることはできず、技能実習法に定められた範囲を忠実に守ることが必要となります。

そもそもが介護技能を習得させる目的があることから、習得させる技能の範囲及び時間については法で定められています。

技能実習生にさせることができる業務は大きく4つに分けられます。「必須業務(身体介護)」「関連業務(掃除洗濯、レク、記録等)」「周辺業務(お知らせの掲示等)」「安全衛生業務」です。

さらに必須業務は「労働時間の半分以上」、関連業務は「労働時間の半分以下」、周辺業務は「労働時間の3分の1以下」、安全衛生業務は「上記の業務ごとに10分の1以上」とおおまかな時間が定められています。

各業務についてはほぼ固定されているため、施設独自のプログラムを行わせることはなかなか難しいでしょう。日本の介護技能を移転するという目的であるため、実習生にはある程度の画一的な技能の習得が必要となるからです。

これらの業務については「技能実習計画」を作成し、適切なスケジュールの中で行っていく義務があります。ポイントとしては、監理団体はこの実習計画作成の「支援」はしてくれますが、作成義務は受け入れ施設側にあります。特定技能における支援計画のように登録支援機関に丸投げできるような規定はないのです。

介護技能実習計画モデル(厚生労働省HPより)

上記のモデルを見るとわかるように、4つの業務についてかなり細かく項目を分けて指導しなければならず、これらの内容を外れた技能実習計画は認められません。

介護実習評価基準(厚生労働省HPより)

また、認定された技能実習計画どおりに実習が行われなかった場合には実習自体の取り消しが行われることがあるため忠実に計画の内容を遂行しなければなりません。

そのため、同様に作成義務のある「技能実習に従事させた業務及び技能実習生に対する指導の内容を記録した日誌」により、実習の遂行を確認していきます。

しかし、上記の日誌だけでは実習の遂行を計画通りに進めていくことには無理があるため、別途プログラムやスケジュールを作成することが望ましいとされています。

受け入れ期間継続条件

その他にも両者に差異がある事項として大きいものは「受け入れ継続に条件がある」ということです。

特定技能及び技能実習については、両者とも最大受け入れ期間は「5年」となっています。

しかし、特定技能は本人が継続を希望すればそのまま5年までは雇用できることに対し、技能実習はいくつかの壁があります。

技能実習評価試験の概要

介護技能実習生は、「技能実習評価試験」をクリアしなければならず、この試験をパスしなければ技能実習を継続することはできずに帰国を余儀なくされてしまいます。

具体的には、一般社団法人シルバーサービス振興会が行う介護に関する学科試験及び技能試験に合格することが必要となります。

一般社団法人シルバーサービス振興会HP

技能実習評価試験は、入国1年後に「初級技能実習評価試験」が行われ、入国2年後または3年後に「専門級技能実習評価試験」、入国後最終年後には「上級技能実習評価試験」が行われます。

技能実習の最大継続年数は5年なので、上級試験は直接継続に関係するものではありませんが、初級及び専門級試験に関しては、実習生の合格不合格が直接介護事業者の運営にも関わってきます。

そもそもこの試験に合格していくことが適切な技能実習の履行を担保することにもなっているため、この試験に合格するためのプログラムが技能実習計画だと言うこともできるでしょう。

ちなみに、最長となる5年の継続ができるのは、優良認定された監理団体及び実習実施者(施設)に限られているため、そもそも実習開始の時点から継続限度が3年となる場合があります。

技能実習評価試験の合格基準

実技試験の合格基準は、

・得点合計が満点の60%以上

・0点となった試験課題がない

・全ての評価項目を実施している

学科試験の合格基準は

・得点合計が満点の65%以上

となっています。

試験に一度不合格になってしまっても、それぞれの試験で一回ずつ再試験が受けられます。しかし再試験にも不合格であった場合は強制的に帰国となってしまいます。

技能実習評価試験は認定を受けた外部の「試験評価者」がその外国人が所属している施設に出張して行います。原則技能実習指導員が立ち会って行うため、担当している技能実習指導員としてもかなりのプレッシャーがありますね。

一時帰国

介護技能実習生は3年後に、継続が決まっていたとしても一時帰国することが定められています。

一時帰国の期間は「1ヶ月以上2か月以内」とされています。すでに長く経験を積んでいる実習生は立派な労働力になっていることでしょうから、この間は職員数に配慮しておかなければならないでしょう。

特定技能に関しては、これらの継続に関する条件はありませんので、技能実習生を受け入れる施設としてはこの点についてよく考えておかなければなりません。

技能実習等から5年以上継続して雇用するためのテクニック

技能実習で3年~5年受け入れた後、継続して施設で雇用したい場合には、一つのテクニックがあります。

技能実習で3年を経験すれば、特定技能試験を受けずに特定技能への在留資格変更が可能です。

これは、外国人の技能実習生が日本にいながら在留資格の変更ができるため、実質同じ職場で継続して働き続けることができることとなります。

そのため、技能実習で5年経験した後、在留資格を特定技能に変更した場合、最大10年働き続けることが可能です。

さらに、その後介護福祉士国家試験に合格すれば、在留資格を「介護」に変更して永年日本で働き続けることができるのです。これが技能実習者や特定技能での在留者の一番の目標とも言えるでしょう。

上記の在留資格の変更は、登録支援機関または行政書士が行えますので、お考えの方は問い合わせてみると良いでしょう。

【登録支援機関】一般社団法人日本海外人材支援機構リンク

【技能実習と特定技能の違い】まとめ

技能実習制度を用いて外国人介護労働者を採用する場合と、特定技能制度を用いて外国人労働者を採用する場合のメリットとデメリットをまとめてみました。

技能実習での採用

メリット

・特定技能と比べ、まだ少ないとはいえ実績がある

・技能実習生に行う業務が定められているため、それに沿った指導を行えば良い

・技能実習から特定技能へ移行できれば、最長10年間同じ施設で雇用することができる

デメリット

・技能実習責任者や技能実習指導員、生活指導員、日本語学習指導者(任意設置)の準備など、施設の受け入れ態勢を整えるのが大変

・業務内容が法定されており、それに外れた実習計画は認められない

・技能実習計画の策定及び実施、スケジューリング等、実習担当職員の負担が大きい

・技能実習評価試験に不合格になると強制的に帰国となるため、施設の運営に影響してしまう

特定技能での採用

メリット

・労働力供給のため、比較的早く採用することができる(現時点では該当国の状況による)

・本人が希望していればそのまま5年間は採用を継続できる

・業務についての縛りがゆるく、ある程度広い範囲の業務を行わせることができる(契約内容による)

・本人の支援業務等は登録支援機関に委託させることができるため、施設の担当者の負担は少ない

デメリット

・特定技能での雇用は最長5年であり、介護福祉士試験に合格させないと永年雇用ができない

・スタートしたばかりの制度であり、実績が少ない

海外から外国人を採用する方法は色々な種類があります。しかし、技能実習で受け入れる場合も特定技能で受け入れる場合も、外国人の待遇や業務、生活の支援等、様々なフォローをしなければならないことには変わりがありません。外国文化を進んで理解し、施設全体のレベルアップにつなげていくことができれば人材不足の解消以外にも効果があると思います。今回の内容が介護事業者様の参考になれば幸いです。

※当事務所代表の花村秋洋は公益社団法人日本介護福祉士会の「介護職種の技能実習指導員講習」をうけております。

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