さすまたを設置している施設は要検討!さすまたを設置するリスクとは?
当事務所の防犯対策研修において、本当に命を守れる対策について参考にさせていただいているチャンネル(田村装備開発(株)「ガチタマTV」様)での動画でこのようなことについて話されていました。
簡単にまとめると「さすまたを設置しているのにさすまたを使わないことによってリスクが生じる」というものです。
この動画を観て非常に衝撃を受けましたが、十分に考えられることだと思います。
社会で「さすまたが防犯対策の必需品」という間違った常識が広まっていることによって、その他の弊害がもたらされてしまうのです。
現在、さすまたを設置している会社や施設などは非常に多いと思います。特に福祉施設で言えば、設置している防犯器具の9割が「さすまた」であると言えるでしょう。
本当に命を守れる防犯対策を考えたことの無い事業者ではさすまたのみを購入し、それだけしか対策を講じていないという危険な状況で日頃の運営を行っていると思います。
当事務所では「正当防衛の知識を取り入れた不審者対策研修」を行っておりますが、今回は当該動画をヒントに正当防衛と言う観点から「さすまたを設置している事業者のリスク」というものを解説していきたいと思います。
さすまたを設置することで生じてしまうリスクとは?
さすまたは相手を傷つけない防犯用具としては大変便利なものです。
では、さすまたを設置することで生じてしまうリスクとはどんなものでしょう。
さきほどの動画で述べられている要旨について説明します。
(動画内4:02あたりから)「そこにさすまたがあって、それを使いたくないとする。そこにはバットもあったためバットで相手を叩いた場合、一般的な警察官であれば納得はしてもらえるかもしれない。しかし一部の警察官(検事や裁判官を含む)から『さすまたがあるのになぜバットを使ったのか』と咎められる可能性を否定できない。」
というものです。
これについて、正当防衛の要件を元に解釈してみます。
まず、刑法における正当防衛の要件は下記のとおりです。
- 急迫不正の侵害があったこと
- 自己または他人の権利を防衛するためであったこと
- 必要性・相当性があったこと
- 防衛の意志があったこと
その中で今回関係がある点は「必要性・相当性」についてです。
正当防衛が成立するには、「やむを得ずにした必要最小限の行為である必要がある」という建前があるのですが、もちろんその場の状況により「必要最小限の行為」には幅があります。
さすまたでは防ぎきれない(または防げる可能性が低いとされる)状況においては、より可能性が高い物で防衛行為をすることは可能とされています。
しかし、さすまたとバットが隣り合わせに置いてあった状況であえてバットを選んだ場合には、さすまたを使わなかった理由まで求められてしまう可能性があるのです。
仮に自分を殺そうとする者と対面した場合、その場にバットしか置かれていなかった状況であれば、バットで殴打することの必要性・相当性は十分認められると思います。
しかし、さすまたはバットよりも攻撃性の低い道具ではあります(バットで殴打する>さすまたで相手を押さえつける)。そのためさすまたが隣にあった場合には、相手によりダメージを与える武器であるバットを選んだということについて、自分に不利に働いてしまう可能性が否定できないのです。
その場にバットしか無かった場面と比較すると、必要性・相当性という点について、正当防衛の適用を受けるために立証しなければならない事項が増えてしまうという結果になります。これは自分や法人を守るといった点においては非常に不利に働くといえるでしょう。
迷いが無く使える防犯器具の検討が必要となる
この点については、確実な判例などが無いため(ご存じの方がいらっしゃいましたらぜひお教えください)、はっきりとしたことは言えません。
しかし、さすまたがあることによって負わなければならないリスクがあるというのを分かっていただきたいと思います。
自分やお客様が殺されるかもしれないという状況においては「最大の防御力(攻撃力)」を持った物が最も有効となります。
さすまたは「相手を傷つけない」ということに特化した防犯用具であるため、さすまたで対応できる場面には限界があります。
なおかつ、さすまたよりも攻撃力の高い物を選択して使った場合に、そのことについて不利に働いてしまう可能性が生じてしまうのであれば、見直す必要があるでしょう。
どのような防犯器具が自分たちの事業所に合っているのかは、事業所ごとに違いがあると思います。私がかつて働いていた福祉施設では「施設の通路が狭い」、「女性職員の割合が多い」という点を加味し、法人内の全ての施設で使われていたさすまたではなく防犯スプレーを準備しました。
これ一つがあれば全てのシチュエーションに対応できるといった防犯用具を見つけることはなかなか難しいと思いますが、さすまただけ設置して安心しきっている施設は大変ハイリスクであるというほかありません。
まずは事業所職員で話し合い、「事業所に適した職員とお客様を守れる用具」を検討する必要があると思います。
不審者対策を検討するには正当防衛の知識が不可欠!
店舗や福祉施設などの事業所で不審者対策を行うには「正当防衛に関する知識」が不可欠となります。
正当防衛の知識が無ければ、どんなに良い防犯用具を備えていても躊躇なく使うことができないからです。
例えば多少不審に見られそうな来客に対していきなり防犯スプレーを吹きかけてしまった(結果犯罪者でも何でも無かった)。これは「傷害罪」となってしまう可能性が高いでしょう。
どのような状況なら正当防衛とされる可能性が高くなるのかについて、職員が知っておくのと知らないでおくのには法人全体のリスクに多大なる影響を及ぼします。
当事務所では、お客様や利用者様はもちろんのこと、職員と法人全体も守ることを目的とした不審者対策研修を行っております。コストをかけず多くの職員に参加してもらえるデータ配信による形式もご用意しておりますので、お気軽にご相談ください。
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